東京藝術大学音楽学部邦楽科には、長唄、三味線音楽、箏曲、能楽、邦楽囃子、尺八、日本舞踊、雅楽の専攻があります。和楽の美は、こうした様々なジャンルが共存する藝大という環境を生かし、邦楽科ばかりでなく音楽学部の他科(西洋音楽)や、美術学部の教員、学生が協力して、専門の壁を超えた新しい邦楽の舞台作品の創作および上演をしています。
「有為転変の賦」は、平成27年度の和楽の美「ヒミコ」から始まった歴史を辿っていくシリーズの第3弾として、源平の時代を取り上げ、新たに書き下ろした新作舞台として上演致します。この時代の主役ともいえる平清盛・源頼朝。今回はその裏側で時代の犠牲となった人々に焦点をあて、日本伝統の邦楽と新しい映像技術・舞台美術により、日本の力強さを感じさせる美しい舞台を創作いたします。邦楽演奏には、第一線で活躍する本学常勤教員である邦楽奏者、美術には三井田盛一郎教授率いる絵画科が一体となり日本の美を追求した豪華な究極の舞台を作り出します。また清盛・義経役として中村梅雀を客演に向かえ、新しい時代を象徴する邦楽絵巻を展開します。
2020年に開催される「東京オリンピック&パラリンピック」に向けて、イメージカラーを五輪の「黒」とし、'世界の平和と芸術'をテーマに掲げ、この「和楽の美」公演において継続的に日本音楽の歴史を辿ります。
和楽の美は本学の演奏芸術センター主催で平成14年に始まったシリーズで、美術や伝統音楽、舞踊などの専門家たちの自由な発想によって繰り広げられます。たとえばコンピュータグラフィックが用いられたり、あるいは美術学部ならではの最高の技術で驚くような舞台面が披露されたりするのも、和楽の美の楽しみのひとつです。伝統邦楽に詳しい方々にはもちろん、伝統にあまり馴染のない方々にも、充分御満足いただけるような舞台を制作いたします。幅広い年齢層の方々にとって楽しく、分かりやすく、親しみやすく、かつ本格的な、これからを生きる伝統芸能を知っていただける絶好の機会となることと思います。ぜひお楽しみにご来場下さい。(統括 萩岡松韻)
写真は『和楽の美 大和は国のまほろば』(2016年)より