2018年11月1日から11月11日まで、東京藝術大学大学美術館地下二階展示室2にて、藝大フレンズのご協力をいただき、「刻まれた時間−もの語る存在」展を開催いたしました。おかげさまで、大学美術館での展示にかかる費用を賄うことができ、図録の出版等を含めて充実した展覧会となりました。来場者は短い会期ながら5523名に登り、盛況を見せました。
本展覧会は、本学彫刻科教授深井?の退任記念展と連動して企画された彫刻展です。本学彫刻科教授原真一を中心として、大学内外から27名の彫刻家を招聘し彫刻作品を展覧いたしました。出展者はいずれも深井から強く影響を受けた作家たちであり、それらの作品を一堂に並べることによって、80年代後半から現在に至るまでの日本彫刻の展開を俯瞰することができるのではないかと考えました。
彫刻の持つ叙述性・ナラティブをキーワードとして、空間に配置されたバラエティに富んだ彫刻作品は、現代において拡張を続ける表現媒体・手法の多様性を象徴しつつも、何かを「もの語る」物体としての彫刻の普遍性を表すことができました。またそのように展開する多様な素材に対して、彫刻において古くから使われてきた素材による作品も多く見られ、同時代性を感じさせる彫刻表現となっており、強いコントラストを示していました。そのように、日本彫刻にある伝統と現代における新たな展開を、「彫刻の持つ叙述性・ナラティブ」に意識を向けることによって、包括的に彫刻の魅力として提示することができたのではないかと考えています。
藝大フレンズの方々をはじめ、多くの方々にご来場いただき、大変嬉しく思っております。出品作家によるギャラリートークの際には、それぞれ出品者、参加者による闊達な質疑応答が見られ、これから制作を続けていく出品作家にとっても、大変有意義なものとなりました。
大学美術館での展示に際し、展示室の使用にかかる経費のほぼ全てを賄うことができ、図録他展覧会を作り上げる予算を確保することができました。この度は、藝大フレンズによる賛助を賜りまして、このように展覧会を成功させることができました。
藝大フレンズの皆さまに心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。