日時:平成29年8月25日(金)
午後1時〜午後2時半(第1部)、午後3時半〜午後5時(第2部)
場所:東京藝術大学音楽学部第4ホール
大学美術館にて開催の展覧会「藝「大」コレクション展 パンドラの箱が開いた!」の関連事業として能楽公演を行いました。今回の展覧会では、藝大が所蔵する作品の中から、能楽と題材が共通する美術作品を展示しています。
公演の対談では、古田亮准教授(大学美術館)から、作品の作者や創作の時代背景についてご紹介がありました。たとえば、上村松園をはじめ、かつては能楽に造詣の深い美術家が少なくなく、作品にも影響が見てとれる事。岡倉天心率いる明治20〜30年代の東京美術学校(東京藝術大学美術学部の前身)では、欧州の美術界に対抗する日本独自の主題を求めて、日本の歴史や古典文学に取材する作品が奨励されたことなどです。
また、武田教授からは、上村松園の《草紙洗小町》は、左膝を立てて草紙を洗う小野小町が描かれますが、これは上村松園が学んだ金剛流のスタイルで、宝生流では両膝をつくと。実物の扇(能で用いる中啓と、仕舞で用いる鎮扇)の二種類を拝見しながら、登場人物の性別や年代、物語の内容によって、柄や色味を選ぶ余地があることなど、実演家ならではの興味深いお話が伺えました。
今回の公演演目の、連吟と仕舞、舞囃子は、通常の演能と異なり面も装束も着けません。能で一番大切な「謡」を通して、物語や人物像を体感していただく好機となったのではないでしょうか。
そして、藝大フレンズの皆様のご支援を頂き、このような公演を開催できましたことに、心より御礼申し上げます。この度は、誠にありがとうございました。
なお、公演時の撮影映像は、小泉文夫記念資料室作成のweb教材「アジアの楽器図鑑」から発信する予定です。「美術から能楽を」「能楽から美術を」という双方向の芸術鑑賞体験をweb上でもお楽しみいただけますと幸いです。
◆小泉資料室のweb教材「アジアの楽器図鑑 能楽」
http://www.geidai.ac.jp/labs/
*「舞囃子」「仕舞」「素謡」の動画は、ページをスクロールしていただきますとご覧いただけます。
◆小泉資料室のwebサイト「研究成果」
http://www.geidai.ac.jp/labs/
* 武田教授と古田准教授の解説を掲載させていただいております。
[内容]
展覧会と能楽公演の企画意図
対談〈1〉 武田孝史教授(邦楽科)と古田亮准教授(大学美術館)による能楽と絵画の解説
連吟「草紙洗」シテ 武田孝史
上村松園作《草紙洗小町》1937 [日本画]
仕舞「西王母」シテ 川瀬隆士
橋本平八作《西王母》1930 [彫刻]
仕舞「井筒」シテ 武田孝史〈第1部〉
森川杜園作《能 井筒》(根付)19 世紀
仕舞「熊野」シテ 武田孝史〈第2部〉
下村観山作《熊野御前花見》1894 [日本画]
対談〈2〉 武田孝史教授と古田亮准教授による能楽と絵画の解説 能楽で使用する「扇」
舞囃子「経政」シテ 水上優〈第1部〉
小堀鞆音作《経政詣竹生島》1896
舞囃子「融」シテ 小倉健太郎〈第2部〉
俵屋宗達伝《伊勢物語図》(色紙)1798
舞囃子「熊坂」シテ 金森良充〈第1部〉 シテ 高橋憲正〈第2部〉
森川杜園作《能 熊坂》(根付)19 世紀
[出演者]宝生流シテ方能楽師:武田孝史、小倉健太郎、水上優、高橋憲正、金森良充、川瀬隆士、囃子方:藤田貴寛(笛)、住駒充彦(小鼓)、佃良太郎(大鼓)、小寺真佐人(太鼓)
[主催]東京藝術大学音楽学部邦楽科、東京藝術大学音楽学部小泉文夫記念資料室
[助成]藝大フレンズ賛助金助成事業、公益財団法人 文化財保護・芸術研究助成財団、東京藝術大学音楽学部同声会
[企画・製作]東京藝術大学音楽学部小泉文夫記念資料室 植村幸生室長、尾高暁子学術研究員、松村智郁子学術研究員
[特別協力]東京藝大 × クラウドファンディング
[協力]東京藝術大学大学美術館
[監修]武田孝史
[ディレクション]古田亮、松村智郁子
[撮影]松村智郁子、堂端徹、木岡史明
[写真キャプション]
上段右より:対談 武田教授、古田准教授、《西王母》川瀬隆士、《熊野》武田孝史
2段目右より:《井筒》武田孝史、《融》小倉健太郎
3段目右より:《熊坂》金森良充、《草紙洗》、《清経》水上優
下段右より:四拍子:藤田貴寛(笛)住駒充彦(小鼓)佃良太郎(大鼓)小寺真佐人(太鼓)、《熊坂》高橋憲正