《概要》

【公開資料】

・L. v. ベートーヴェン《ゲラートの詩による6つの歌曲》作品48（初期出版譜、ジムロック社、1835年頃？）

・L. v. ベートーヴェン《弦楽四重奏曲変ホ長調》作品127（19世紀出版譜、ショット社、1865〜71年？）

【資料展示】

・日時：8月29日（土）および8月31日（月）〜9月7日（月）

・場所：東京藝術大学音楽研究センター（音楽学部構内）

【講演・演奏】

・日時：8月29日（土）13時開演

・場所：東京藝術大学第6ホール（音楽学部構内）

・講演者：土田英三郎（本学教授）

・演奏者：宮下大器、畑めぐみ、Quartet Arpa（戸原直、小川響子、古賀郁音、伊東裕）

・曲目：L. v. ベートーヴェン《ゲラートの詩による6つの歌曲》作品48、L. v. ベートーヴェン《弦楽四重奏曲変ホ長調》作品127（いずれも当時の楽譜による演奏）

2015年8月から9月にかけて、藝大フレンズのご協力のもと、「ベートーヴェンの19世紀楽譜　公開・講演・演奏」を開催いたしました。

本展は昨年度青山財団の助成を得て購入したベート--ヴェンの19世紀出版譜2点を中心に、展示・講演・演奏の3方面から多角的にその実像に迫ろうとしたものです。これらは、いずれも本展において初公開となりました。

会期中初日の8月29日（土）には、展示資料に関する講演および演奏を第6ホールにて行いました。講演では本学楽理科の土田英三郎教授が、資料の「鑑定報告」を行いました。土田教授は多くのベートーヴェン資料のスライド画像を交えつつ、表紙の価格表示や会社支店名の記載方法から資料の由来年を導き出すなど、一般にはあまり知られていない様々な資料鑑定方法を提示しました。

演奏では、まず本学修士課程の宮下大器（テノール）と畑めぐみ（ピアノ）が、展示資料に基づく《ゲラート歌曲》の演奏を行いました。この資料は歌詞の全節が省略されずに記載されている点が特徴であることから、今回の演奏では特に有名な第4曲〈自然における神の栄光〉のみ第1節から第3節まですべて通して歌いました。続いて、同じく本学修士課程の弦楽器専攻生による、国立音楽大学附属図書館所蔵の初版譜に基づく《弦楽四重奏曲》の演奏を行いました。資料中に音符の誤植が見られ、その箇所を当時の演奏家であったならばどのように弾いたのかを考えることによって演奏に複数の可能性が生じる箇所があることなどから、準備にいっそう力が入りました。用意した200席がほぼ満席となった会場では、本展示会の内容に高い関心を持つお客様が熱心に講演・演奏に聴き入っている姿が見られ、多くのお客様にご満足いただけたものと思います。

　なお、展示会では上記の二資料とあわせ、本センター所蔵のベートーヴェン関連資料を展示しました。また、18世紀のメタスタジオによる作品集など、同じく青山財団による助成を得て購入した様々な貴重資料も展示しました。とりわけ、ベートーヴェンの自筆譜のファクシミリの前では足を止めて頁を繰りながら長時間ご覧になるお客様が多く、音楽研究センターがこれらの貴重な資料を所蔵していることを呈示する良い機会となりました。また、展示とあわせて行ったパネル?キャプションによる資料解説や、8月29日の講演・演奏会の上映を通し、お客様には目と耳の両方から資料を身近に感じていただけたのではないかと思います。

本事業は、普段音楽資料の管理にたずさわる私たちが、音楽資料の重要性や、それらに向き合う面白さを、様々な媒体を通して提示することを試みられる機会となりました。来場者の皆様が熱心に資料をご覧になっている様子や、芳名帳にご記入いただいた「自筆譜が面白かった」「貴重な機会でした」などのご感想は、私たちにとっても大変励みとなりました。

最終的に、演奏・講演会と展示会を合わせ、当初の予想をはるかに上回る延べ約850名の来場者にお越しいただきました。事業実施にあたりご助成いただき、また、ご来場いただいた方を始め、本事業に高い関心を示してくださった藝大フレンズ会員の皆様に改めてお礼を申し上げます。

ベートーヴェンの二資料の展示

展示資料に関する講演

≪ゲラートの詩による6つの歌曲≫演奏

≪弦楽四重奏曲変ホ長調≫演奏

展示会の様子