本公演は、東京藝術大学正木記念館で開催の「邦楽器が受け継ぐ技・形・音:こめられた丹精」展(2014年11月20日-30日)の関連イベントとして行いました。
第1部 太鼓の革張りのデモンストレーション(於:正木記念館1階)
太鼓の胴に革を張り、胴と革の接着部分を鋲で留める作業を実施しました。通常は目にし得ない太鼓製作の実演や、製作者の体験談、質疑応答を通して、邦楽器の製作過程について大いに関心をお持ち下さったことと思います。
実演:南部屋五郎右門(浅草太鼓製作販売店) 13代目石渡司郎氏、明石光一氏
第2部 上方落語のハメモノ(於:正木記念館2階)
上方落語では、噺の中にハメモノ(太鼓や笛など楽器を用いた賑やかな囃子)を多く用います。次の内容で上演しました。
(1)落語で使用する楽器(大太鼓、締太鼓、笛、鉦、銅鑼、三味線ほか)の紹介。
(2)落語会で演奏する「儀礼の太鼓(開演前の音楽、終演を知らせる音楽など)」の紹介。
(3)落語に用いる自然音等(雨音、雪音、幽霊の出)を描写する奏法の紹介。
(4)上方落語「蛸芝居」(林家染雀)、「七度狐」(笑福亭喬若)
実演:林家染雀、笑福亭喬若、はやしや絹代(三味線)[上方落語協会所属]
上方落語では、太鼓の革の部分を打つ一般的な奏法だけではなく、革を留める鋲を用いる特殊な奏法や、自然音の描写や暗喩などに用います。前半では、太鼓の多様な用法を含めて楽器を紹介し、後半では、落語の実演でお楽しみいただきました。
叩けば音が出る太鼓は、楽器の中でもごく身近な存在ですが、今回は、製作の実演と落語の上演を通じて皆様に意外な発見や、より一層の親しみをお持ち頂けのではないでしょうか。
本公演は、従来の美術や音楽という通常区分とは、一見すると異なる「楽器の製作過程」と「落語」という異色の上演でした。それにもかかわらず、藝大フレンズ賛助金におかれましては、積極的に賛助の手を差し伸べてくださいましたこと心より御礼申し上げます。
企画:植村幸生、尾高暁子、松村智郁子、久保仁志(以上 東京藝術大学音楽学部小泉文夫記念資料室)、薩摩雅登(東京藝術大学大学美術館)